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執筆:増田泌尿器科 増田光伸

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熊本悦明「人生100年の長寿時代は 女性の時代となるのでは」

2022/2/28

アンドロロジー、テストステロンの研究で、わが国を代表する研究者である熊本先生から、2021年の抗加齢医学会の講演記録を提供頂き。ここに開催させて頂きます。

先生方の診療の参考になれば幸いです。


人生100年時代に必要な医学

 昔から100歳まで生きることは人間の夢であった。中国の周の時代に、世界最初の医学書と言われる厳門に、人寿(じんじゅう)100歳という言葉が載っています。日本では、鎌倉時代に北条時宗は、日本を指揮して元寇(げんこう)と戦った時の年齢は28歳。源氏物語の頃の平均寿命は30歳位でした。かつては夢とされていた100歳まで生きる時代になった今、女性がいかに活躍するかが本日の講演のテーマです。

 寿命は男性より女性のほうが長いですよね。面白いことに90歳以上まで生きた男性が、わりと自立性のある生活ができてと注目されています。一昨年の日本抗加齢医学会で、東京大学高齢社会総合研究機構の秋山弘子特任教授が発表したデータでは、90歳以上の男性で自立性がある人は1割程度存在していました。

「それはどうしてだろう?」、と疑問を投げかけていましたが、私の立場からすれば、テストステロン値が高いからと即答します。男性だけではなく女性も、元気でやる気があって暮らせる。長寿を楽しむために男性ホルモン補充が必要と今日はお伝えしていきます。


●健康長寿に必要なのは男女と共にテストステロン

私は1958年に東大で男性ホルモン外来を開きましたが、関東大震災でつぶれた後に木造でした。それ以来ずっと男性ホルモン学をやっています。世界的にも男性ホルモン外来はほとんどなく、私が作った後に、ロンドンで開いているマルコム・カラザース氏がいると聞き彼の書いた本を読んで、1998年に彼の外来を訪れました。「50年間は、随分苦労したね」と彼と話をしたのです。それほど、男性更年期という言葉は医学界でもほとんど使われていない、常識から外れた発想でありました。

 その後も、啓発のために、私もいろいろな本を書いてきました。読売新聞に2年間連載していた、なぜ女が男に作りかえられるかをまとめた「アダムとイヴの科学」からはじまり、男の更年期や熟年期についても数冊あります。いずれも。女性にも男性ホルモン=テストステロンが大事だという内容です。また、女性成人病クリニックの村崎芙蓉子院長と対談しました。この記事は、家庭画報(201911月号)に掲載されています。彼女は女性の更年期障害治療のパイオニアですが、「海外や国内を駆け回っていて、最近、疲労がたまるようになってきた」と相談を受けたのです。そこで、「テストステロンを補充したらどうか」とすすめまたところ、村崎先生は82歳にしてはじめてテストステロンを補充して、すごく元気になったというリアルな感想を語ってくれました。

医学は今までは病気を治すという考え方でしたが、病気を治した後はどうするのかが問題になってきた。ただ長生きしても、ぷらぷらして過ごすだけでは、人生100年と言われる新しい時代では厳しいでしょう。病気で死なないで長生きするだけなく、健康を維持する医学が、これから必要なのですが、この新しい健康長寿医学は大学でもまだ教えていません。

今までの人生は、思春期から成人期。成人期のいわゆる生殖期で子供をつくって死んでいった。45歳以降の更年期についても、1972年に私が男にも更年期があると発表したら「とんでもないことを言う」と医学界か随分と批判をされたものです。今はどうでしょう? 熟年期で75歳まで生きるようになり、さらに今は75歳以上の100歳まで生きる時代。医学も発想を変えなければいけない。

一生には、春夏秋まであると思っていたら、なんと冬まで我々の人生は続くようになっています。人生は一身にして三生を生きる時代になってきた。そして100歳まで生きるには、ただ生きるだけではなく、やる気があって、元気で暮らせなければ意味がない。その為の医学はどうすべきかが新しい医学のテーマになっています。

●健康長寿医学に欠かせない性ホルモン医学

生殖年代を支えていると思われていた性ホルモンが、健康長寿で重要であるということがわかってきました。健康長寿医学で性ホルモンの重要性が語られなければなりません!

 

生殖年代を支えるのは

女性は女性ホルモン(エストロゲン) 生殖脳と、子育ての内向きの生理

男性は男性ホルモン(テストステロン)生殖脳と、子育ての外向きの生理

 

だんだん人生が長くなるにしたがって、女性が更年期で女性ホルモンがガクッと減ったその後はどうするか、医学界で議論が起きています。それには、女性も男性と同じようにテストステロンを補充する。そして元気をサポートするのが、これからの新しい医学です。女性も第二、第三の人生を元気に生きるというのが、私の今のテーマで、そのためのテストステロン補充について話していきます。

 

 

●健康とはなんぞや?

京都のお坊さんが、「最近90歳になってそろそろ天国へ来てください」とお迎えが来た時に、「いや、100歳まで待ってください」と追い返せと冗談交じりに言ってらっしゃるのを耳にしました。実際、90歳以上の方は200万人を超えています。

 ただ、死なないで長生きをするだけでなく健康でなくてはならない。ところが、「健康とは何ぞや?」というのが難しいのです。今、みなさんが病院に行って、「調子が悪いから、先生なんとかしてください」と言って、お医者さんは「あなたは健康です」と診断をつけるには。血液検査でいろいろ調べて、病気で出てくる生理学的な変化がなければ健康。「あなたは健康だから、運動でもしたらどうでしょう」と言われる。でも、患者さんに言わせると、「運動する気にならないから医者に来てるいのに、若い先生は運動しろって言うだけ」と。健康というものに対する概念が今の医学界ではない訳です。

 私もかつては大学で教えていましたが、健康という問題を国家試験に入れよと提案したら反対されました。私は健康には男性ホルモンが必要であると考えて人間ドッグ学会に、「男性ホルモンを人間ドッグで測らないのは、時代遅れじゃないですか」という演題を出したら、会長から「そんな演題はとんでもない」と受け付けてもらえませんでした。医学界でも健康には男性ホルモンが重要という概念がないわけです。そういう今の医学界の雰囲気を変えて行くのが我々の役割です。

 私は海外で使われているAMSの健康調査用紙は日本人には合わないと判断し、少し変えて熊本式健康調査票を使っていました。けれど、肝心な長寿で元気でやる気がある体の状態かどうかは、わからないものでした。

 今のように病気じゃなくて長生きする時代に、「健康」とはどういう意味を持つのか。質問紙でチェックするだけでなく、全身的な活動を維持できているかのチェックが重要です。病気がないだけではなく、元気であって、午後になっても疲労感を感じない。よく眠れるとことも大事。食欲もあって、やる気がある。人間も動物。積極的で行動力がある。面倒くさがらないで人生を過ごせるということが、健康のポイント。心と体の健康、プラス、やる気、行動力、社会生活機能があるのが大事になります。この体の状態と心のやる気、行動力までチェックできる質問紙で健康概念のインデックスを作り、それを評価できるのがSF36

 健康に関する質問では、例えば階段を登れるか、長寿で有名な日野原先生も病院の階段を歩いて上り下りされていました。行動力のある健康が大事です。さらにそれをグラフ化しています。平均を見ると50歳まではいちを行動力も伴っていますが。70歳ぐらいの熟年期をすぎると体調が少し落ちてきます。最近は70歳での身体トレーニングこそ長寿のポイントであると言った本も出ています。

 今までは還暦までが人生で、それで鍛えて置けば、あとは自然に消えていくという考え方でしたが、今は70歳、いや80歳以上が普通。この会場で70歳以上の方は手をあげていただけますか。いらっしゃいませんね。まだ社会に出た、学会で議論をする方たちは熟年期より前。熟年期を過ぎた方たちは、社会生活があまりできない。できないというよりしないような社会ですね。これからは70歳、80歳でも社会に出て、学会に出て議論もし、講演もするような時代になるんじゃないかと、私は考えています。

●元気を取り戻した!テストステロン補充をした患者さん

70歳は、最初は青い線で小さい円でしたが、テストステロン補充をすると赤線のように輪が広がっていきます。簡単に言えば、テストステロンが車で言えばエンジンオイルのようなもの。老化して動けるように元気になれるのが、新しい医学です。

 

 50代女性の更年期障害の症例です。わる病院の関係の方で、更年期障害で調子が悪いと。今の医学では国際的に女性ホルモンを補充すると血液凝固が進み、心筋梗塞や脳梗塞を起こすリスクが高いのであまり使わないようにというのが常識化しています。彼女がお医者に行き、「テストステロンを補充してほしい」と頼んだところ。「女の人にテストステロンを打つなんてとんでもない」と断られ。私の外来に駆け込んできたのです。すると更年期障害で長期に弱って元気がなかったのに、すっかり元気になりました。これは23年前のデータですが、最近も夜10時位に電話があって「元気に病院に勤めています」と話してくれました。



シニア世代以上か活躍すべき

 政治家は子ども庁を作ると言っていますが、老人庁、シニア庁を作って、人口の3分の1となって高齢者をいかに社会貢献させていけるかを考えるべきです。ところが今は年寄りをどうするかがまだ決まっていない。

 岸田総理より、元気な男性のシンボルのような河野さんを総理大臣にという声があったが、蓋をあけてみるとソフトな感じの岸田さんに決まった。単なる、男らしいとか女らしいとかではなく、これからは、男らしさのなかの女らしさ。女らしさの中の男らしさ。複雑な混合的な性格を持つ人がリーダーになる時代。多様性は必要。

 92歳になる私の世代は、「男のくせに」と親から教育されていました。男は男らしく過ごすのが正しい生き方のごとく言われて成長したのですが、今申し上げた岸田氏のように男らしさの中にもソフトなニュアンスのある人が選ばれる時代。新しいらしさが求められます。混合性のある人はリーダーシップをとる時代。

 男性ホルモンは細胞のリセプターについて、細胞の核に働いて、崩れたたんぱく質を元に戻す働きをします。これも今でも大学では教えられていません。医学部でも人生における男性ホルモンの意味はあまり知らされていません。

 男性ホルモン、女性ホルモンはどういう働きをするかというと、先程少しお話しましたが、男性ホルモンは生きていくだけではなく、外向きの生活活性を維持する。女性ホルモンは内向きの、生活を維持する機能を持つ。人間が生きていくためには内向的なホルモンも必要だけれども、社会を維持するリーダーシップを持つためには男性ホルモン。

 何度も言ってきましたが、今までの医学は臓器がダメになって死んでいくのを治す。これからは病気で死ぬのではなく、年をとって老化で死ぬのを食い止め、老化を予防するにはどうすればいいかにテーマはシフトしたのです。

 年をとると男性はテストステロンが減ってきて女性的になる。女性は女性ホルモンが減るだけじゃなく、女性の持つテストステロンまでも減ってくる。

 赤枝財団の研究グランドで女性のテストステロン値を調査しました。

健康である人達の血中の男性ホルモンを調べた。男性の10分の1レベル。男性ホルモンはたんぱく質にくっついているもの(トータル・テストステロン)とくっついていないもの(フリー・テストステロン)がある。加齢でもTTは変わらないが、FTは男女ともに下がっていくことが明らかになった。副腎から出る弱い男性ホルモンであるDHEAは年齢と共に下がっている。これによっても女性の元気は奪われている。いかにこれを維持するかが大事になってくる。

元気になりたいと男性ホルモンを使った症例。性格まで変わった。女性も男性ホルモンを使うことで元気になれます。

 今までの人生は更年期まで伸びました。ところが今は更年期を過ぎて熟年期まで生きられるようになったと思ったら、さらなる高年期の100歳までなった。元気がなくなった高齢者への男性ホルモンをどうするかが大問題。年寄りは肉を食べちゃいけないなんていいますが、大間違いです。男性ホルモンの原料になりますから食べてください! しかも、女性ホルモンは男性ホルモンを原料に作りかえられます。男女ともに男性ホルモンがあって生活しているのです。年をとった女性が女性ホルモンを作れなくなっても、男性ホルモンまでなくなると人間として元気に暮らせなくなる。男女共に、生きるための基本的なエンジンオイルとしての男性ホルモンこそ大事であるのです。

産婦人科の教科書にも、女性に男性ホルモンがあることも書かれていません。後輩に講義をした時に、「女性に男性ホルモンがあるなんて、聞いたことがない」と驚かれました。医者でさえ、女性に男性ホルモンはあるという常識はない。

 年をとってくると内分泌的には女性が男性化してきます。年をとったご夫婦の女性が強くなってくるのは、女性ホルモンが減って男性ホルモンが比率として高くなってるからと理解する必要があります。

 女性でも男性ホルモンを使いなさいという時代になります、

 女性の排卵日に、実は男性ホルモン値がピークです。女性の排卵日は勝負日です。行動力を支える男性ホルモン。アメリカの受刑者のテストステロンの高さと犯罪の暴力性が比例しているという研究があります。これは極端な例かもしれませんが、社会的活躍している政治家の女性はテストステロン値が高いということもわかっています。女性でもテストステロン値が高いといことは元気! 女性の時代をつくるためにも男性ホルモンを補充してエンジンオイルを満たして生活していただく。女性にテストステロンを使うということを理解していたただきたい。女性が強くなるホルモンのバックグラウンドがある。テストステロンはメンタルの支えにもなります。女性に男性ホルモンから元気が大切。

 人生は100年といっても、男性ホルモンが低ければ長生きしても意味がない。認知症になる。男女とも高齢になったら男性ホルモンを維持することが必要。

 元気のためには男女とも男性ホルモン。

 人間は胎児の時は女。それを男性につくりかえるのはテストステロン。しかも元気のためにはテストステロン。

 指を見て。元気のいい人は、人差し指は短い。年をとると女性でも男性ホルモンが減ってくることを理解すべし。

 男性ホルモンが多いと寿命は延びます。男でも男性ホルモンが少ない人は命が短い。ボケにも男性ホルモン投与でぼけなくなる。

 男女ともテストステロンを補充せよ!と50年もたてば、人生150年になるかも。長生きすればするほど女性は男性ホルモンの助けを必要とするべきとみなさんに意識していただければ幸いです。